麻酔科について

麻酔科とは

麻酔科は、手術や侵襲的な処置を安全かつ快適に行うために、動物の「痛み」「恐怖」「ストレス」を取り除き、全身状態を安定させる重要な診療科です。犬や猫は人のように「痛い」と言葉で訴えることができないため、体の変化をモニターしながら繊細に管理する必要があります。
近年では、以下の点により麻酔の安全性は飛躍的に向上しています。

麻酔薬や鎮痛薬の進歩
小型犬や高齢動物に対応できる高性能な生体モニター
専門的知識を持つ獣医師による個別管理

当院では、すべての動物にオーダーメイドの麻酔プランを策定し、術前から術後まで一貫してサポートしています。

麻酔が必要となる代表的な場面

処置内容	対象例
外科手術	避妊・去勢手術／腫瘍摘出／骨折整復／椎間板ヘルニアなど
歯科処置	抜歯／歯石除去（スケーリング）など
精密検査	CT・MRI撮影時（動物の体を静止させるため）
終末期ケア	苦痛緩和を目的とした処置

状況に応じて全身麻酔や局所麻酔を適切に組み合わせ、安全性と動物への優しさの両立を図ります。

術前検査とリスク評価

麻酔を安全に行うためには、事前の健康状態の把握が極めて重要です。特に高齢動物や持病のある子では慎重な判断が求められます。

実施する主な検査

血液検査肝・腎機能、貧血、電解質バランス、凝固系など
レントゲン検査心臓・肺の構造や大きさの確認
心電図検査不整脈や徐脈・頻脈の有無
心エコー検査・血圧測定必要に応じて実施

これらの検査結果をもとに、個体ごとの麻酔計画（使用薬、投与量、管理方法）を調整します

麻酔中のモニタリングと管理

当院では、吸入麻酔を基本とし、必要に応じて静脈麻酔・鎮痛薬・局所麻酔薬を併用しています。麻酔中は、以下の生体情報を継続的に観察します。

実施する主な検査

心拍数／心電図心臓のリズム・異常の有無
呼吸数／酸素飽和度（SpO₂）呼吸状態と酸素供給の確認
血圧低血圧・高血圧の早期発見
体温特に小型犬や猫では低体温リスクが高いため徹底管理
麻酔深度：意識レベル・反射の有無を総合的に判断

手術中は保温装置や温風ブランケットを使用し、術後の回復を妨げる低体温を防ぎます。

術後の管理と疼痛ケア

術後も麻酔科の重要な仕事は続きます。動物は痛みを隠す傾向があるため、我慢させないケアが大切です。

当院の術後管理の特長

マルチモーダル鎮痛複数の鎮痛薬を組み合わせて痛みを最小限に
ICUでの集中管理点滴・酸素投与・モニタリングを実施
退院後のフォロー内服薬の処方・創部のケア・食事のアドバイスまで対応

術後もペットとご家族が安心して過ごせるよう、丁寧なサポートを行います。

麻酔に関するリスクとその対策

麻酔には多少なりともリスクが伴いますが、以下のような対策により安全性を最大限に高めています。

当院の術後管理の特長

高齢・持病のある子には慎重なリスク評価
状態に応じた麻酔薬の選択と投与量の最適化
モニター機器による継続的な状態把握
万が一に備えた緊急対応体制

ご不安な点は、獣医師が丁寧にご説明し、同意の上で麻酔実施いたします。

飼い主さまへのメッセージ

麻酔科は「手術の前準備」ではなく、「命を守るための医療分野」です。私たちは、どんな小さな処置でも安心して受けていただけるよう、

科学的根拠に基づいた麻酔管理
飼い主さまとの信頼関係の構築
動物に優しい医療の実践

を大切にしています。
ペットの麻酔に不安を感じるのは当然のことです。だからこそ、何でもご質問ください。「痛くない・苦しくない医療」は、確かな技術と真摯な気持ちから始まります。私たちが責任をもって、安心できる医療を提供いたします。